ギィーッ ドォン…


重たい扉が開く音がした



「だれ…?だれかいるの?」
少女は怯えたようにつぶやいた



「怖がらないでおくれ、僕は決して怖い人ではないよ?」


彼はやさしい声でそういった


「……。」


少女は目が見えないからどんな人なのかもわからなかった


それでもどこか懐かしくて安心した…


「あなたは、だれなの?」
少女は問いかける




「僕かい?ぼくはね、焉辰(えんしん)というんだ」
彼は、焉辰と名乗った。



「え…ん、しん?」



「そうだよ。 すこし難しい名だったかな?好きに呼んでおくれ」
彼は、優しそうに少女の顔を見つめた。


「うん…」
少女はうなずいた




「じゃあ、ぼくも聞くけど君の名は?なんというんだい?」




「あたしは…あたしの名は、みつ…し、時雨…よ」
少女は時雨と名乗った。本当の名ではないその名を……。