「先輩!ほら!」   

梨紗は花火を幸輝のほうに向けた。      

「危ないって!!」
           
「あはは!ごめんごめん!」

花火大会の約束がダメになって、こんなコンビニで買った手持ち花火をやっているのに、梨紗は本当に楽しそうにはしゃいでいる。       
           
幸輝は、そんな梨紗を
『好き』を越えた、愛しいような気持ちで見ていた。         

「綺麗だねぇ〜」   

そう言いながら、光に照らされた梨紗の横顔はとても綺麗で、幸輝は花火など見ていなかった。 

持っている花火が消えて、梨紗が顔を上げた時 
           
2人は初めてのキスをした。

それは一瞬の出来事で、幸輝は照れを隠すように、すぐに花火に手を伸ばした。

「もう1回…」    

梨紗の言葉に、幸輝は耳を疑ったが、振り返って見たその顔が、あまりにも柔らかな表情で
もう1回、唇を重ねた。

今度は長く、ゆっくりと……。        

忘れられない大切な、花火大会の夜の思い出となった。