完全に敬語に戻っていた。          
付き合い始めてから先輩に、敬語じゃなくていいと言われていた。   
           
晴美や良平達と話すのと同じように、先輩と話せることが嬉しかった。 
           
まだ、慣れてはいなかったけど…。      
           
梨紗は、練習を始めた先輩を見ていた。    
           
真剣な顔をしている先輩は本当にかっこいい。 
           
見ているだけで、ドキドキする。       
           
ずーっと見ていたって飽きるわけがない。   
           
楽しそうな顔で、梨紗が自分を見てくれていて、待っていてくれる。  
           
幸輝もそれが、嬉しかった。         
           
帰り道、幸輝が梨紗に聞いた。        
           
「そういえばあの時、なんで学校に戻ってきたの?」         
           
幸輝が言うあの時とは、何も知らずに1人で帰った梨紗を、幸輝が追い掛けた時のことだった。