梨紗は、小沢先輩のいる水道に向かっている。 
           
先輩の横には、同じバスケ部の2年生もいたけれど、そんなことは関係ない。         
           
梨紗の気持ちは一直線だった。        
           
「小沢先輩」     
初めて話しかけた。  
           
洗った顔をタオルで拭きながら、梨紗のことを見る。         
今まで遠くから見ていることしかできなかった人が、目の前にいる。  
           
梨紗は声をかけたものの、何を話すか全く考えていなかった。     
           
「……頑張ってください!」         
笑顔でそう話すので精一杯だった。      
           
「あ、…うん。ありがと」          
小沢先輩の言葉を聞いて、梨紗は晴美の所に戻った。         
           
「帰ろ!」      
恥ずかしさが強くて、先輩が戻ってくる前に体育館をあとにした。