最後にこれだけは伝えたいと思うことを考えてきていた。       
           
「えっと…前に来た時は泣いてわめいてごめんね。思い出してよ!なんて自分の感情ばっかり押し付けちゃって…。でも、もういいの。幸輝が元気でいてくれるならそれでいい。これからずっと思い出してくれなくても、私は一生忘れないから…。幸輝と過ごした時間…絶対に忘れないから……」
           
溢れ出しそうな涙を必死にこらえて、幸輝の前に手を差し出した。
           
「握手くらい…いいでしょ?」        
           
幸輝は黙って梨紗の手を握った。
           
「今までありがとう。………バイバイ!」
           
精一杯の笑顔でそう言って手を離し、ソファーの上のコートを持って外に出た。    
           
「梨紗ちゃん!」
           
追いかけてきたのは健司だった。       
           
梨紗は足を止めて振り返る。
           
「私…思ったんだけど」

「え!?」

健司は梨紗の言葉を待つ。