話しを聞いてはいけないと思いつつも、ドアの前から動くことはできなかった。久しぶりに耳にした幸輝の声を、もっと聞いていたかったから。
           
電話の相手は真宏のようだった。       
           
そして次の瞬間、耳をふさぎたくなるようなことを聞いてしまった。
           
「でさぁ…佐倉さんが時々家に来るんだよ。……う〜ん…なんかあの子見てるとイライラするっつーか…受け付けないんだよなぁ」
           
大事な人の口から絶対に聞きたくない言葉だった。
           
約束があるからと健司に告げて家を出た。

立ち聞きした自分が悪いのだと言い聞かせていたけれど、涙が止まらなかった。
           
イライラするって…どうしてそこまで拒絶されるのか。私と過ごした時間は思い出したくない出来事だったのか。
           
わからない…。
苦しいよ……。