飛び出してきた子供を避けようとハンドルをきった車が歩道に突っ込んだ。そこをたまたま歩いていたと……。     
           
その場所が理解できなかった。        
           
地元から少し離れた所で、いろんなお店があるショッピング街に向かう道だった。梨紗に誘われでもしない限り幸輝が普段行く所ではない。   
           
誰かと約束していたわけでもなく、なぜ幸輝が1人でそこにいたのかは、わからなかった。   
           
幸輝はまだ目を開けない。
           
幸輝の両親、健司、真宏、梨紗。そして廊下にいる良平。みんなが幸輝の意識が戻るのを待っている。
           
2時間が経過した時、
           
「兄貴…?」
           
健司の声を聞いてみんなで幸輝を覗き込んだ。
           
ゆっくりと幸輝の目が開いた。まだボーッとしてるようではあったけど、しっかりとみんなの顔を見ている。そして、
           
「父さん…母さん…」 
           
確かな言葉を発した。
           
梨紗の視界が涙でぼやけた。
           
廊下にいる良平に報告に行き、良平も中に入ってきて一緒に幸輝の所に戻った。