病院に向かっている間のことは、正直あまり覚えていない。最悪の事態ばかりが頭の中をよぎっていた。        
           
病院に着いて病室に入ると、ベットに横たわる幸輝がいた。      
良平は廊下で待っていた。

お母さんと健司が、幸輝の顔を覗き込むようにして立っている。    
           
少し離れたところに幸輝の親友の真宏がいた。 
卒業式以来に会った真宏に軽く頭を下げて、幸輝に近づいた。     
           
幸輝の胸と頭には配線が付けられていた。配線が繋がるモニターには、数字や線が映し出されていたけれど、よくわからなかった。       
少しすると幸輝のお父さんが走って病室に入ってきた。
           
両親が揃ったということで医師からの説明が始まった。        
           
「左腕の骨折以外で目立った外傷はありません。命に別状はありませんが、頭を強く打ったようなので絶対安静が必要です。」         

命に別状がない。   

その言葉を聞いて力が抜けた。おばさんは泣いている。        
           
安心感から吐き気がした。
本当に良かった……。

医師と入れ代わるようにして警察の人が入ってきて、事故の説明をしてくれた。