8月9日。朝からとても暑く、蝉の声が響いている。
           
お客さんは途絶えることなく、この日のバイトは特別に忙しかった。時計を見上げると午後4時。
あと1時間で終わる。と思っていた時だった。
           
「梨紗」

自分の名前を呼ぶ大好きな人の優しい声が聞こえた。
           
梨紗は手を止めて、辺りを見渡したけれど幸輝の姿は見えない。
           
「佐倉さん!ボーッとしないで!」

忙しいせいもあって少しピリピリしている店長に怒られてしまった。