「お母さぁ〜ん!早く〜」

階段の上から梨紗が大きな声で呼んだ。

今日は7月最後の土曜日。去年もおととしも2人で行くことができなかった花火大会に、今年はついに行ける。     
           
お母さんに浴衣を着せてもらって家を出る。  
           
待ち合わせ場所に幸輝がいるのが見えると、走り出したい気分だった。 
いつもより歩きにくくて一歩一歩がもどかしい。
           
「お待たせ〜」

「おぉ。じゃ、行こっか。…やっぱりいいな〜浴衣」
           
花火大会に向かう人で混雑した道を、手を繋いで歩き出した。

午後7時からの開始で、夏の夜空に大きな色とりどりの花火が打ち上がった。