「なんか、先輩変わったよなぁ」       
           
「あんなに優しく梨紗のこと見るんだね」
           
絵里と良平も自然と笑顔になった。
           
幸輝は推薦で大学が決まっている。

梨紗と学校で過ごせる卒業までの残りわずかな時間を、惜しんでいるようであった。
           
桜のつぼみが膨らみ始めた3月の中旬。    
           
卒業式。       
           
「小沢幸輝」
           
「はい」
           
壇上にあがる幸輝を在校生の席から、じっと見ていた。        
           
幸輝の存在を知ったこの体育館で、最後の制服姿を目に焼き付けておこう。          
           
卒業式が終わり、3年生は最後のHRの後、外に出てきた。