沈黙の重い空気でいっぱいの部屋で、時計の秒針の音が、妙に大きく聞こえた。        
           
どうして何も言わないの?もうすぐ良平が来る…。このまま帰るのは嫌だ。
           
「幸輝…」
           
沈黙を破った梨紗の声を聞いて、幸輝が話し出した。         
           
「梨紗があんな目に遭ってるのに…殴られてるだけで何もできなくて……あんな奴らボコボコにしてやりたいのに殴ることもできなくて…。俺…マジ…情けねぇ……」  
           
幸輝の目から一筋の涙が流れた。       
           
その涙を見たら、言葉が出なくなった。    
           
呼び鈴が鳴る。    
           
幸輝の家を出て、良平と並んで歩いていた。良平は電話で幸輝から、事情を聞いていたらしい。