そして……背中に感じていた痛みが、ない。

 背に手をやると、服はキレイに切り裂かれている。

 しかし、あの紅は手を染めることはない。

 斬られたのは、ウソじゃないんだ……。


「ショウ!」


 彼は、私のすぐ横、地面に横たわっていた。

 彼の身体にキズは見えない。

 なぜか、治っていた。

 彼に駆け寄って、その白い頬に手をやる。

 
「ショウ、バケモノ退治したよ。もう大丈夫だから、目を覚まして」


 けれど、彼の頬は──冷たかった。

 なんで?


「ねぇ、ふざけなくていいから、起きてよ」


 返事はない。

 つぅ、と頬を温かいものが伝った。


「…………どうして……」


 なんで、目を開けてくれないの……?

 一緒にいるって、誓ったじゃない。

 ずっと、一緒にいて、軍隊に入るって……。

 ショウのウソつき。

 身体の力が抜け、私は地面に崩れ落ちた。


「うわあぁぁあっ……!」


 叫び声が、何もいない森に響き渡った。

 私の背には、斬られた傷痕だけが、残っていた。