沈黙が、場を支配する。

 何が起こったのか、わからなかった。


「くっ……」


 地面に倒れ込む、それ。

 パッと空に散る赤い花びら。

 それらは、次々と私の顔を濡らす。

 そんな……。


「ショウ……!」

「かばッた……ダと?」


 バケモノがうめきながら、たじろいだ。

 その反動でショウの身体は支えを失い、地面に倒れ込む。


「ショウ……ッ」


 なんとかはいつくばったまま、腕を懸命に動かしてショウのもとへと近寄る。

 彼は、私を見て笑った。

 
「クレア……無事、か……?」


 いつもみたいに、安心するあの笑顔で。


「私は!……大丈夫……でも、ショウが……っ」

「く……俺は、簡単にはしな、ない、よ」

「で、も……」


 ウソ……。

 ショウの特に大きなキズ、腹部の刺し傷は、出血の量がすごいのに……。

 たぶん、ううん。確実に。

 バケモノの攻撃は、彼の身体を貫通していた。

 そんな傷が、大したことないはずがない。

 こんなときまで、私の心配をしなくてもいいのに……。