身体は言うことを聞かないくせに、思考回路だけはまだ生きているようだった。

 イヤな予感がする。

 たぶん、蛇の毒が身体に入ってしまった。

 きっと、これからそれほど時間が経たずに全身に回ってしまうだろう。

 
「ククク……」


 不協和音の声が、ぼんやりとした意識の中で、やけに大きく響く。

 
「これデ、じっくりト痛めてから魔力ヲいただけるナ……」


 虎が、まだまた遊び足りないといった様子でペロリと赤い舌で牙を舐めた。

 
「私ハ、この男のほうかラもらおウカ」


 鷲がくちばしで指したのは……ショウだった。

 ダメ!

 それだけは!

 叫びたいけれど、喉が枯れて、声が出ない。

 
「魔術師ハみんなデいただこウ。まダ生きてィル。時間ハある」


 他の頭の意見を聞いていた蛇がチロチロと舌を出し入れする。

 
「……っ、クレアに手を出すな!」


 斬られたのは、私の方が深かったのか、ショウはわずかに肩を斬られているだけで、声を出す余裕があったみたいだ。

 無理やり引き剥がされたのに、己の魔力を振り絞り、人型を保っている。

 赤く染まった肩を押さえながら、ゆらゆらと立ち上がる。

 そして、私を守るように立ちはだかった。

 ダメ……。