そのまま、炎の壁は大きく競り上がり、バケモノに覆いかぶさった。

 バケモノは呻き声を上げて暴れ狂い、地響きを立てて倒れ込んだ。

 焦げた臭いが辺りに充満し、灰色の煙が視界を覆い尽くす。

 その煙から逃れ、上空で様子を見ていた私は小さくガッツポーズした。

 ちゃんと、炎出せた!

 日々の訓練の成果だ。

 地面にしばらく平伏していたけれど、ダメージは少なかったようで、すぐにバケモノは体勢立て直し、バサリと大きな翼を広げ、空に浮かび上がった。

 視線が交り、緊迫とした空気が流れる。


「やはり、すぐニ殺そウ」

「魔術師ハやはり、魔力ノ質ガ違う……」

「殺セ、殺せ……!」


 空気が明らかにひりつき、奇怪な声に明確な殺意が宿った事が窺えた。

 三匹の、目つきが変わった……!

 冷たいものが背筋を滑り落ちていく。


「くっ……」


 次の瞬間、彼らの動きが明らかに変わった。

 まさに目にも止まらぬ速さと言った動きで、確実に私たちに攻撃を与えてくる。

 怒り狂った蛇の毒が、吐く息とともに辺りに撒き散らされ、周囲の木々を傷つけ、あっという間に溶かしてしまう。

 何とか宙で身を翻し、攻撃を避け続けるものの、それを持続しているのも難しい。

 息をつく間もないまま、また虎の前足が目の前を通りすぎ、つぅ、と頬に赤い線が入った。

 強い……。

 けれど。


「このままやられっぱなしじゃないんだから!」


 魔法陣を点したままだった右手を、頭上に掲げる。

 さらに魔法陣に魔力を送り、陣をわずかに変形させる。

 すると……熱を持ち、赤に光っていた魔方陣が、一転して青白い光を放った。


「これでも食らえぇ!」
 
「グワアッ!」


 裂帛と共に解き放たれた鋭く、槍となった雷がバケモノを頭から突き刺さる。

 脳天から尻尾の先まで電流が身体を突き抜けたバケモノは轟音を立てて地に落ちて、もがき苦しみ、周囲の木々を薙ぎ倒していく。

 羽が、血が、毒が飛び散り、その場は凄惨な状況だ。