〈これ以上はクレアを危険な目に合わせられない! 引いてもいいんだぞ!〉

「いいえ! やるわ!」


 掠れた喉に力を込め、叫ぶ。

 空で折り返すと、風を切る音をたてて目の前を過ぎ去った虎の鋭い爪を避ける。


「このまま野放しにしたら、また被害者が出てしまう!」


 このバケモノは、頭は三つあるけど、身体と前足が虎で、後ろ足と大きな広げると数十メートルにもなる翼が鷲の部位。

 そして、鋼鉄の様に硬く、鞭の様にしなる長い尻尾が、蛇だ。

 とにかく相手の手数が多く、気を抜くと、どこから攻撃が来るのかわからない。

 避けているばかりではいられない。

 こっちも攻撃しないと!

 魔法陣を手に点し、焦点を定める。

 陣の中央から風が生まれ、小麦色の髪を揺らす。

 口の中で素早く詠唱を済ませると閉じていた目を開き、力を込めた。


「いっけえぇえ!!」


 途端に自身とバケモノとの間に灼熱の炎の壁ができ、一瞬バケモノはたじろいだ。