「じっくりト痛メて、味わッてやろゥ」


 蛇が舌なめずりをし、その口から毒の液体を垂らす。

 ──来る。

 逃げなきゃ!

 私はすぐさま、踵を返し、翼を広げて空を目指す。

 けれど、予想以上にバケモノの動きは速かった。


「くぁっ……」


 鞭の様にしなった蛇の尻尾が無防備なお腹へとめり込み、私は地面にたたき付けられる。

 あまりの激痛に息が出来なくなる。

 目の前が歪み、白くなって感覚が遠のく。

 意識が、朦朧とする……。
 

〈クレア! 避けろ!〉


 鋭いショウの声が、ぼんやりしていた頭を刺激する。

 相手は見えておらず、ほとんど勘で身体を捩ると、なんとか体勢を立て直し、後ろに転がる。

 すると、わずか数ミリの場所に蛇の毒液がボタボタと落ちた。

 とたんにしゅうしゅう音を立ててそこに咲いていた花が、溶けていく。

 その様子をようやく鮮明になった視界で茫然と見守っていると、身体が持ち上がった。

 ショウが翼を大きくひらいて、空へと舞い上がってくれる。


〈大丈夫か!? クレア!〉

「ええ……ケホッ……」


 そう頷いたけれど、まだ呼吸するのが苦しかった。

 息をするたび、全身がズキズキと痛む。

 でも、気にしていられない。