バケモノは、魔力を持つものを食べているといった。
つまり、盗賊は人をこちらにおびき寄せて、金品だけ奪い、このバケモノに捧げていたというわけだ。
これで、互いに良いことずくしだ。
盗賊は金品を奪って、その相手をバケモノに渡して仕舞えば、報復などないし、もしあったとしてもあのバケモノなら返り討ちだ。
バケモノも、待っていれば獲物が舞い込んでくるのだ。
少しくらい盗賊たちを助けたところでそれは気まぐれといった形だったが、盗賊たちにとっては幸運なことだった。
私に助けを求めてきた男の子のお父さんは、たまたまこいつらに出会ってしまい……バケモノのいけにえにされていたんだ。
多少傷つけられていたけれど、一命を取り留めたのは、どんな気まぐれかこのバケモノが魔力だけ吸い取ったからだ。
この、獰猛な三つの頭たちが……。
「……もゥ、我慢できナィ」
グルル……と、虎が牙を剥き、目を細めた。
「ま、待ってください!」
周りにいた魔法使いたちが、突然慌てだし、バケモノから距離を取った。
「今あなたが暴れると、私たちまで巻き添いに……」
蛇が、シューシューと舌を出し入れしたかと思うと……。
「……しゃらくさィ!」
──ドカアアァッ!
「ギャアァアアッッ!」
一瞬のことで、何が起こったのかわからなかった。
あっという間に視界が砂埃に覆われ、呼吸の自由を奪われる。
そして、砂埃が晴れると……。
「……っ!」
そこには、さきほどまで立っていた魔法使いたちが、剣を構えていたわずかひとりを残して、倒れていた。