教職過程を履修する美波は、同じ文学部とはいえ、美香よりも授業時数が遥かに多かった。 


おまけに、高校書道の免許も取得しようとするものだから……。 



『美波、おはようー!』 

『おはよう!千佳ちゃん、久しぶりだね!』 


『よぉ!』


『痛っ!』


頭を押さえながら振り返ると、同じサークルの健太だった。


美波は、明るく気さくな性格のせいか、男女ともに幅広い交友関係にあった。 


『さっ、急ごう!始まっちゃうよ!』


『うん』


HERMESのフールトゥを片手に、講義の場所へと急ぐ。





記憶の片隅に残る、あの日の私たち。――あのとき、何を求めていたのだろう……。