「へぇー、さすがだね!」

快く、一泊の東京行きを許してくれた、玲子の旦那さまを尊敬してしまう。


「じゃ、とりあえず、東京駅に着いたら連絡して!」

「うん、わかった。じゃ、またあとでね。みんなにもよろしくね!」


「おう!またな」



ピッと、親指で通話ボタンを押した。


デッキから見える景色は、暗黒の世界。


どこを走っているのかも分からないような中を、新幹線の轟音とともに走り抜けていく。 


座席へ戻ろうと車両の前に立つと、ウィーンと音を立てながら自動ドアが開いた。 


――と、


一斉にこちらに向けられた視線にたじろぎながらも、座席を目指し、俯きながら通路を歩いた。