『ウチに来れば?』

言われるままついて行って
彰人さんの家の中。

危機感はない。
もう放心状態のまま座る。
しゃがみ込んだ先に見える彰人さんは
私と顔を合わせない。

「…………。」
「涼香ちゃんと会う時は大抵雨だね。」
「…………。」
「あ、三回しか会ってないか。」

返答できない私に彰人さんは溜め息を吐く。
もう、それぐらいじゃへこまない。
へこめないんだ。

呆れられたのか、彰人さんは台所へ行く。
どうも人の接し方に慣れない。
もし慣れていたら、乃とも……。

滲んだ涙で口の中がしょっぱくなった。

「……涼香ちゃん。」
「……はい。」
「何があったか知らないけど、笑ってよ。」
「…………。」

“カチャカチャ。”

「好きな子がそんなんじゃ、悲しいから。」

“コト。”

テーブルに置かれるポタージュ。
湯気が天井に昇り消えていく。

何故涙が滲んでいるの?
カップの湯気が滲んだの?
雨の名残が溜まったの?
それとも…………