「ねえ、涼香何担当できる?」
「ギター……。」

考えてみた。
本当に、やりたい事って、違うんじゃないかな……。
目指しているのはSAKIなのに、これでいいのかな?
でも、入ってきたばっかりで言えないか……。
乃にさえも言えない。そんなこと、ワガママだって分かってるから。

「涼香?ギターね?」
「えっと……。」

口ごもる。言えないよね、言ったとしても、ダメだよ。

「歌わない?ギター弾きながら。最初は一緒に歌うって感じで。」
「え?」

言ってくれたのは、彼だった。

「え、良いの……?」
「嫌?」
「嬉しい、ケド……。」

先輩達を横目で見る。皆、頑張ってるし、難しいと思った。
だって、先輩の目も、後輩の目も気になる。

「他の学年が気になるんだ?」
「…………。」
「気にしてるんなら、俺達だけの学年でもう一グループ作ればいい。認めてもらってから一つのまとまったグループに入るのも良いんじゃない?」

彼のシンパシーは、また私に向けられていた。
まるで心を読み取っているかと錯覚してしまうほど、私の心の内を理解してくれていた。
嬉しくて、涙が出そうだった。

「有り難う……。」
「…………。」

私達の出逢いが、運命だったらいいのに。
心の底からそう思えたのは、まだまだ先のことだった。

“ポロロロン……。”

弦が弾かれると共に私の身体も振動する。
皆もそれぞれのメロディーを奏でている。
まだ曲は決まってない。メンバーだって。
でもね、乃と彼は入ってくれている。
それだけで、今は十分だった。

「…………。」

眼を閉じて深呼吸。
皆と呼吸が重なるように。
ゆっくり、心を重ねるように。