「……もう一度、弾いてくれる?涼香ちゃんの好きな曲。俺達、まだ聞いてないから。」
「あ、ハイ!!」

もう一度演奏できる。
小さな部屋。
いや、この日だけは、私にとってのライヴハウスだった。SAKIのHOMEを弾いた。
演奏は成功。皆拍手をしてくれた。それが、予想以上に嬉しかった。

「凄いよ、涼香ちゃん。」
「あ、有り難うございます。」

緊張した。けれど、さっきの演奏前とは違う。
あの人にだけ感じる感情。
彼のシンパシーが胸の奥からも伝わってくる気がして安心した。

「今度の曲は、SAKIにしようか。」
「え……?」

彼は皆をまとめて指示をした。
低い声は案外響いて、心地よいほどで。

「部長候補には敵わないよね、アタシ達の気の強さも。」
「ああ、何か時々ああいう風になるんだよな。普段赤ん坊みたいなアイツもさ。」
「…………。」

貴方は皆に包まれていたね。

そのとき私は知ってたよ。

貴方のその奔放さだって

皆には大切なものだったって。

アタシも貴方みたいになりたい。

久しぶりに、人を尊敬した。

親さえも尊敬できなかった私の

二人目の尊敬する人。

ねえ、

私にとっては記念日だったんだよ?

大切な貴方へ。

君の事を、

私はいつから意識したんだろう?

太陽の下で、歌いたい。

君と一緒に。