「…………。」
「きゃ~、雨降ってるし!!」
「やだ~、カール取れちゃうんだけど!」
「ヤバイ!!」

笑い声が聞こえる。
知らない声。
知らない音。
ここは何処。
私は誰。
何故泣いてるの。
何故一人なの。

『アンタが一人を望んだの。』
「……そんな事、覚えてない。」

暗くて映った窓の私が私に話しかける。
モラトリアム。
幽霊なのか、もうどうでもいい。
話す相手は、いらないけれど。
不思議と口が動いていた。

『覚えてるくせに。本当は辛かったから思い出したくないだけでしょう?分かってる。』
「アンタに分かってほしくない。」
『分かるものは分かるのよ。』
「やめてよ……!」
『そうやって現実から逃げてれば良い。一人じゃないって強がれば良い。傷付くのはあなただもの。そんなの関係ないわよね。』
「アンタ誰よ?知ったような口利かないで!!」
『私は私。貴方と同じ私。私はいつも貴方の心の中にいるもの。知らないほうがおかしい。知ってるわ、全て。』
「心……。」
『知ったようなのは貴方。知らないのに強がるのは貴方。苦しいのも、貴方。』
「…………。」
『寂しいでしょう?』

そう言ったら、窓の私は元の私の暗い顔に戻った。何だったんだろう、あれは……。

「寂しい……。」

胸に針が刺さるような痛みがあった。

「私、寂しいの……?」