公園を出て、裕と歩く。
沈黙さえも、幸せ。
別に気にしていなかった。
「ここで良いよ。送ってくれて有り難う。」
「あ、うん。分かった。」
「バイバイ。」
「…………あのさ。」
裕は自分のポケットから紙を出した。
ピンク色の、四つ折の紙。
何だろうと思ってじっと見つめた。
「何?」
裕はそっと私の前に紙を差し出した。
大きい手に、紙は小さく見える。
ただ、笑顔で。柔らかい笑顔で。
「初の、涼香への手紙。」
「手紙……?」
「はは、ラブレター。」
「へ?」
「冗談。」
「ああ……。」
本当は、そのほうが嬉しかった。
「最近、明るくなったよね。」
「日が長いからね。」
「いや、そうじゃなくて。涼香が。」
「そうかな?」
「うん、この前よりずっと。そのお祝いも込めて、この手紙ってわけ。」
紙に裕の香水の残り香が付いていた。
私は大事に鞄に入れた。
しわしわにならないように、大切に。
君との繋がりが、消えないように。