「寄り道?」
「…………月。」
そう言っただけで、裕は上を見上げて三日月を見た。隣に座ってくれた君の甘い香水の香りが心地よい。
「綺麗だよな~、月って。」
「うん。」
「好きなんだ?」
「いっつも見てる。」
「そっか。」
このぐらいで、私達の会話は十分になっていた。
お互い、理解し始めていたから。
「香水、いつも付けてるよね。貰ったの?」
「…………うん。」
「凄く、好きな香りだったから。」
「俺も、この匂い好きなんだ。中学になってから貰った。大切な人から。」
まだ私達は子供だけど、
『大切』という言葉に反応してしまった。
とても、深い意味が隠されている気がして。
背伸びなんていらない歳に、香水をあえて付ける理由。
よく考えると、とても深いもの。
少し、切なかった。
「……明日、頑張ろうね?」
自分から切り出した話を切り替える。
嫌な感じだって分かってる。
けど、辛いから。
「うん、頑張ろう。」
君は許してくれる気がしたから。