「行くよ?」

掛け声と共に流れ出すまだぎこちないメロディー。
楽譜を顧問が取り寄せてくれてくれたバンドスコア。
マイクに口を近付ける。息を吸って、裕君と揃える。
アタシはメロディー。裕君はメンズラップの部分を担当。

声が聞こえたらドキドキしたんだよ?
君の低めの声が
ますます心を落ち着かせてくれて
夢に向えって言ってくれたのも君だった
ねえ 気付いてよ?
アタシの気持ちが離れる前に

息を吸って裕君の声を待つ。

なあ 君は聞こえてる?
実は君を好きだって
伝えたいのに 伝えられない
心を締め付ける君が愛しくて
ねえ 僕は何をすればいいのかな?
ただ君を想っているだけじゃ不安だよ

裕君の声は低いのに通っていて驚いた。綺麗な声だと思って感動してしまった。
唇が緊張で震える。君に劣ってしまわぬように。だから、ギターを引く手さえ止めてしまったんだね。
皆、困った顔してた。それから、何があったかよく覚えてない。ただ君がかばってくれて。無心で返却表を書いて。
皆ゴメンね?でも、私は内心凄く興奮してたんだ―――――。



ねえ、大好きだよ。
今、そう気付けたんだ。