ガラッと勢いよく開く扉。


中学の時より少しだけ大人っぽくなった九条がそこに立っていた。


周りの女子は九条のことをチラチラと見ながら、何やらヒソヒソと話しながら黄色い歓声を上げる。


まぁ、あげたくなるのも分かるけど。


だって、九条は容姿端麗、成績優秀。
それに加えてスポーツ万能。


誰もが憧れて望む人気者の九条。


昔、九条を好きだった女の子は、みんな私の事を気にしてか告白しなくなった。


私と九条は、ただの友達。


それ以上は何もない。


別に私のことを気にしなくても良いのに、なぜ周りの人は気にしていたのか。


きっと勘違いしていたから。


私と九条が仲良くて、
いつも隣をキープしていた私だから
付き合ってるって周りに勝手に思われていたのだろう。


でも、中3の時、告白して私が振られて。それを何らかの方法で知った女子たちは、諦めずに何回も九条にぶつかって行ってた。


それに、もう私は九条の隣をキープ出来るような奴でもなくなったんだから。


だけど決まって九条は、


『今はそういうのに情は入れられないからごめん』


そうやって全部断っていたらしい。


だからきっと、私にもそうだったんだ。


情が入れられなかったんだ。


受験という重みがみんなの背中にのしかかって、最後の学期はみんな疲れて
笑顔がなくなっていった。


朝、いつも廊下は賑わっていた。


だけど最後ら辺はシーンとしていて、
1人として廊下で話している人はいなかった。


どこの教室を覗いても、勉強ばっかしていて、なんだかつまらない毎日を送ってた。


だけど、私だけは違った。


今まで九条の隣をキープしてずっと笑顔でいた私。


受験という重みで疲れていた日もあったけど、九条を見たら頑張れた。


告白して振られた事実は変わらない。

忘れようと思って頑張ってたけど、
無理だったから、諦めないって、高校に行くまでは諦めないって決めてた。


だから、私は楽しかった。


写真を見れば私はどれも笑ってる。

中学時代を思い出せば、私はいつも笑ってる。


九条の隣で笑っていたところを撮られたこともある。


それは、2人の間に、


友達以上、恋人未満。


という空気が流れていたからこその
笑顔だった。