「咲希…?どした?」


「……え?う、ううん!なんでもない!」



私は霧島くんの元へ駆け寄ると再び席につく。



「霧島くん、料理運んできてくれてありがとう。」


「ん。では、冷めないうちに召し上がれ?」


「ふふ。それではいただきます!」


霧島くんとの昼食は終始笑顔で、私は最後まで頬が緩みっぱなしだった。



それから食休みということもあって、暫くその場で霧島くんとおしゃべりをすることに!


「でさ、その常連客がこの間プードル犬を連れてきたら、クソジジイがその犬にめっちゃ吠えられててさ!ブククッ!」


「そうなんだ!マリコさん災難だったね。」


「いや、超いい気味だな。」


「もう!霧島くんってば。…ふふ。」


「そういう咲希だって笑ってんじゃん!ハハハッ。」


「だって、ちょっと想像したらおかしくて…!」



霧島くんとの会話は私の心をどこまでも温めてくれる…。


向かい合って座る彼の瞳はどこまでも澄みきっていて、その瞳には勿体無いほどに私が綺麗に映っていた。



そこでハタと思う。



私、霧島くんと真向かいに座ってる……。




数ヶ月前、忘れもしない彼との図書館での勉強会。


あの時は勉強を教えてもらうためとはいえ、霧島くんとは向かい合わずに隣同士で座った。



私にとって彼のとったその行動が最初はよくわからなかった。



でも、今ならわかるような気がする。


彼の性格をさらに深く知った今なら…。




私に対して、“遠慮”してくれたんだよね?



不良で、すごく恐そうで、


俺様のように見える、


かもしれない。




でもそうじゃないんだよね。




人一倍気遣いができて、仲間想いで優しくて、


そしてとても照れ屋さんで。



だから、霧島くんにまだ苦手意識を持っていた私に、


彼はふざけたことを言いつつも私の正面に座ることを遠慮した…。



「ほんと、あの時のクソジジイの面食らった顔は傑作だったな!咲希にも見せたかったし。」



好き。



霧島くんが本当に好き。



「いつもの傲慢ジジイがその日はスゲーおとなしくなっちまってさ、」


「好き。」


「しまいには熱湯で火傷……………………、え?咲希??」


「え? ………っ?!!」



しまった!!



つい思っていることを口に出しちゃったよ!!!!



私の突然の告白に面食らったのか、霧島くんが瞬きを忘れて私を見たまま固まってしまった……!



わ、私はなんてことをッ!!



恥ずかしすぎる!!



カアアーーーっと熱が顔に集まるのを感じて、俯く私。



すると霧島くんが信じられないという声色で私に問いかけてきた!