「じゃあ、これで上がりね。」
「うん、お疲れ~。」

ギターをギターケースに入れて背負う。

「あ、悪い。俺持って帰るよ。」
「一緒に帰るし良いじゃん。持たせて?」
「ごめん、今日俺用事あんだわ。」
「え……。」
「ホント謝るから。今日は兄貴が久々にアメリカから帰ってくるから待ち合わせしてんだ。」

兄貴……。
家族思いなんだね、圭吾は。

「そっか。良いよ。今日は一人で。」
「ゴメンな?」
「そんな何回も謝らないで。平気だから。」

そう、そんな風にまだ思ってないから。
居なければ、居ないだけ。
それだけなんだから。

「じゃあ。」
「じゃあね。」

夕焼けに照らされた髪がほんのり温かくて。
アタシは気付かぬうちに、自分の教室に居た。

「アタシマジやば、帰ろ……。」

振り向いたときだった。

“カツカツカツカツ。”

足音が聞こえて、顔が青ざめる。
先生だったら、怒られるかもしれない。
そんなんで聞かれても困るっ!!

“バッ!”

とっさに掃除ロッカーの陰に隠れた。