悲しみに明け暮れるのには、慣れた。
私と同じ匂いの人は居ない。
でも、気づかぬ間に探してるのは、何故。

“ガチャッ。”

「……ただいま。」

返ってこない返事。
誰も家には居ないから。
ただ、祖母の部屋のドアを睨む。

「何よ、いつもは遅いと文句言うくせに。」

靴を脱いで家に上がる。
暗い部屋の明かりをつけて、欠伸。
何をしてるのって、自分で思う。

「…………どうして、泣いたの。」

返事は返ってこない。

「圭吾を、利用してるだけ……?」

上の部屋の足音が聞こえてきた。

「…………裏切りと同じだよ。」

心の壁、か……。