「谷口ってさ、……好きだろ?アイツの事。」
「ア、アイツ……?」

戸惑いながら高橋の指の先を見た。
メガネでちっちゃくて、勉強の出来ない男。

「宗助……?」
「そう、村山。」
「アタシが……、宗助を……?」

もう一度、恐れるようにアイツを見た。
一生懸命勉強してる。時々ちょっかいを出す周りを笑ってスルーしながら。
ほら、そんなんじゃ友達居なくなるって。
宗助―――――……?

「俺さ、見てて分かった。アイツの事、好きなんだなーって。」
「そ、そんなんじゃ、無いよ……。」
「あ、動揺してる。」

高橋が何でそんな事を言ったのか、アタシはまだ知らない。
でもね、あの時アタシは少し嬉しかった。
好きでもない人と噂される毎日が、今変わるかもしれない。
そう、思ってたんだ。

「そうかな~?高橋だったらどうするの?アタシの好きな人。」
「それは無いな~、だって谷口、そういう所サバサバしてないもん。」
「…………。」
「言わないよ、別に。」
「……有り難う。」

高橋は、この時から仲良くなれたんだっけ。
数少ない男友達の中で、また一人、不思議な関係の人ができた。
好きじゃないけど、親友でもない。
嫌いじゃないけど、敵じゃない。
君がそういっても、アタシは自分の意志を通す。
それって、なんて言うんだろうね?

「良いって、弱味知っちゃったし?」

恋を真っ直ぐに見ろって、頑張れなんて、言ってくれる人が居なかった。
でもね、君がそう言ってくれたから、アタシは前に進めたんだよ?
有り難うって、素直に言えないけど。

「……馬鹿。」

ただ、笑って見せたら、君は分かってくれるのかな?
ねえ、教えてくれる?
君の優しさの秘訣。

「さ、行こうか?勉強会は終了!」
「終わった~。」
「つか、ほぼ合コンだったっしょ?」

アタシもアイツに、優しくしたいんだ……。