「じゃあ、用済ませたら行ったほうがよくね?俺と教室行ったら絶対俺が宮下にボコられちゃうからさ。本返しに来たの?」
「あ、うん。ずっと返してなかったやつ……。社会情勢と国連の現状との関係。」
「固い本読んでんな。」
「ははは、授業の調べ物で使った。」
キョロキョロしてから机の上にあった返却ポストに置いて、鉛筆で自分の名前を書こうとする。謝罪も書くかな……?
「俺が返しとくよ。行ってな。」
「え、良いの?悪いよ。」
「ほら、早く行け。」
「……有り難う。」
何だか、妙に優しく感じた。
どうして、いきなり?
何だか変なの。
口を袖でそっと隠した。
ふわっと香る甘い香り。
高橋が言ってたのって、この匂い?
宮下の香水……。
何だか、複雑な気分だった。
宮下の香りは、それで、普通な事でしょ?
なのに、何で……?