“チュイーーン!”

小気味良いリズムの後、アップチューンなメロディーが流れてくる。宮下のギターだった。とても心地よい空間になって、アタシは時間を忘れて聞き入っていた。

「…………。」
「どうしたの?もう弾かないの?」
「いや、もう10時だし、帰んなきゃヤバイかなと思って……。親の人、さすがに心配するんじゃない?」

携帯を覗いた。着信0件。
やっぱり心配されてない。
ノックされて返事ないから寝てると思ってるんだろう。アタシの親なんて大抵そうだよね。心配なんか、してない。

「大丈夫みたい。」
「……そっか。谷口が良いんなら、俺は良いんだけどさ。眠くなったら言ってね。俺送るからさ。朝帰りはさすがに俺もヤバイわけだし。」
「うん、分かった。もう少しだけ。」
「良いよ。」

ギタースタンドにギターを置くと宮下はそっとアタシの横に座ってきた。ふわっと香水の香りがした。元カノのあの子に、貰ったやつかなぁ……。
一気に気持ちがブルーになる。

「…………。」
「谷口。」
「ん?どうしたの?」
「手、繋いでいいかな……。」

甘えたような声でアタシの耳元で息をすると、そっと小指をアタシの膝に置いてきた。ドキドキが止まらなくて、アタシは荒くなりそうな息を必死に抑えていた。

「好きなんだ、俺。」
「……アタシも。」
「お願い……。」

二人で、指を絡ませた。