「俺の親父のスタジオ。俺の親父、ミュージシャンでさ。売れてないのに何かこういうの買ってさ、張り切っちゃってんの。でもさ、そんな親父尊敬してんだよね。俺も、こうなりてぇなぁって。」

宮下がリモコンを出すと建物に掛かっていたシャッターが開いて、優しい光が二人を包んだ。

「……お父さんと、同じ夢?」
「うん。谷口はそういうの、ない?」
「仲、悪いんだぁ。そう思ってるだけかもしれないけど。……宮下が羨ましいよ。アタシも、こうなりたいって宮下みたいに素直になれたらっ……。」

体中が熱くなっていた。
アタシは何時の間にか宮下に抱き締められていて、涙を流してアタシの肩に顔を埋めていることに、ドキドキしていた。
少ない経験で、驚いた。

「辛かったんだな……?」
「…………。」
「俺が、もう寂しくさせないから。悲しいときは、一緒に居るから。夢も、一緒に見つけてやるから……!」

赤くなって何も言えないアタシに、宮下は、凄く優しくしてくれた。抱き締めて、優しくそう言ってくれたんだ……。