次の日学校に行ったら、宗助は休みだった。
アタシが責められているようで悔しかった。
何で、逃げるのよ。
どうして避けるの?
独占欲があったらいけなかった?
嫌な気分しか残らないよ。

「は~るかっ。」
「あ…………。」

ニコニコ顔の友香がアタシの席の前で髪の毛をいじる。高橋を見て頬を染めながら。
貴方は恵まれているのに望むの?
恋愛って、いったい何なの?
ねえ、アタシが馬鹿みたいじゃん。

“ガタッ。”

「遥?」
「ゴメン、アタシちょっとトイレ。」
「アタシもついてく~。」

友香の笑顔がずっと夢に出てくる。
楽しそうに話して、アイツの腕や頭を撫でて。
それが次の日には必ず目の前で起こる。

「一人で、良いから。」
「え?」
「すぐだからさ…………。」

ねえ、現実が受け止められない。
アタシじゃなくて友香を選べばよかったじゃん。
あのまま続けて頬染めあって、笑ってれば。
勘違いするだけさせて、突き放すの?
そんなのないよ。酷いよ。

“ジャー……。”

水の音で声を隠していた。

「うっうっ、うっ……。」

情けない声を、誰にも聞かせたくなかった。
馬鹿だね、アタシ。

“サァー。”

「うっ、うっ、うっ……!」

水が引いていくのにも気づかなかった。

「高橋~、悪いボール入っちゃった。お前なら許されるだろうから女子トイレまで取って来てくれね?」
「は、アホか。」

“コロコロコロ……。”

誰にもわかってもらえない。
そう思った。
胸の渦巻きはいつまでも消えなくて。

「おーい……。」
「うっうっ……。」
「…………?」

アンタには、隠し事なんて出来ないのに。