「先輩、こんにちわ。」
「よお。今日は宗助も居るんだな。」

卓球部は女子はアタシだけ。アタシは一人で頑張ってる。宗助と同じ部活って言う実感があるから、多少友達との話が合わなくても構わなかった。

「はい。久しぶりですよね、こいつが来るの。」
「だよな?今度大会だってのに。まだ勉強なんて良いんだよ。」
「でも、コイツ注意報出てますから。」
「あ、そうなの!?」

他愛ない話。いつもの部活。でも、少し違う部活。
毎日が楽しくてたまらなかった。いつも、いつも違う光で溢れてる。

「じゃあ、着がえてきますね。」
「うん、早めにな。」
「は~い。」

今日だって、いつもと同じ。時が流れていくんだ。五月晴れが待ってる。もうすぐそこに。

“ガタガタガタ。”

「体操服、ジャージ……。」
「つか、やばくな~い?マジうけるんですけど!!」

バスケ部の女子達。いつも明るい。
明るすぎるって方が合ってるかもしれない。
その中の一人、山城ミズキ。
アタシを目の敵にしてるのか分からないけど、いつも冷たい眼で睨んでくる。時々見せる笑顔は馴れ合い。教室では皆が目を光らせてるから。先生だって、同じ組の生徒だって。

「…………。」

また、ミズキの冷たい眼。正直、辛かった。理由は知らない。多分、邪魔なだけ。

「えっと、シーブリーズは……。」

作業をする真似でもしてないときつい。涙が出そうになる。
皆知らないから相談も出来ない。逆に人が離れてしまうのは知っていたから。

“ゴソゴソッ。”

一人着がえるのは辛くない。もう慣れた。
自分で選んだ道だったから。でも、寂しいのは、いつまでも変わらなかった―――――。
ラケットは、もうボロボロ。このぐらい、宗助に近付いていたらいいのに……。

“ガタッ。”

ボロボロになったラケットを握って体育館に急ぐ。オレンジ色のライトが眩しい。

「宜しくお願いします。」

一礼をして、アタシの部活が今日も始まる。

「遅いぞ~。」
「女の子ですからっ。」

いつもの笑顔が、少し引きつっているのを気付かれないように―――――。


そうアタシは
いつものように君に近付いていく練習をする。
羽ばたける蝶を羨ましく思いながら。