「あれ?そういえば宗助は?」
「え、いない?」

キョロキョロと見回してもアイツの姿は無い。
食べかけのピタを置いたまま、どこかへ行ってしまった。
もしかして、さっきのことを気にしてるのかもしれない。そう思ったら不安になった。

“♪♪♪”

「友香、メール?」
「みたい。」

友香がカチカチとメールのスクロールをする。
一瞬不思議そうな顔をして携帯を閉じた。

「ちょっと、外で友達が待ってるみたい。待ってて?」
「あ、うん。」
「いってら~。気をつけろよ?」
「うん。行ってきま~す。」

鞄を持って友香は階段を下りていってしまった。
でも、まだ知らなかったね。
君との関係が、少しずつ壊れていってしまうなんて。

「まあ、トイレが長引いてんだろ。平気平気。」
「そういえば皆好きな人って居るわけ?」
「え?!」

皆顔が赤くなる。
青春の香りが漂ってる。

「……人は誰とか聞かないから!!」

美玖一人ルンルン気分だなぁ……。
あ、高橋がニヤニヤしながら見てくる。
もう、さっきの借り消しちゃうよ!?馬鹿。

「……一応、居るよ。」

柳が応える。
知ってる知ってる。

「アタシはまだ居ないよ~。」

美玖、本当かなぁ……?
何か、嘘っぽく聞こえるのはアタシだけ?

「ウチは前は居たけどな~……。」

紗江が笑って答える。
へ~、つか、大人な対応。

「俺は……。」

ためらいがちな高橋に、アタシは少し不思議な感情を抱いた。

「まだ童貞で良いや。」
「何だそりゃ!?」
「まあ、いるっちゃいるよ。」

お茶を濁すように言った高橋だったけど、アタシは何か、不穏なものを感じていた。

「……アタシは、います。」

顔が熱い。

「え、そうだったんだ?」
「知らなかった~。」

高橋が笑ってたから、アタシはさり気なくあっかんベーをした。



ねえ、今の今まで、幸せだったはずだった。


なのに、何で?


僕等の、始まり。


恋の始まり?


ねえ、目の前が暗かった。


そんな事しか、覚えてないよ。