「い、いえ…1人で食べられますから」

私は、慌てて否定した。

それってつまり先生に
食べさせてもらうって事よね?

それは、さすがに恥ずかし過ぎる。
必死に左手で箸を持とうとするのだが
利き手ではないから持てない。

コロッと箸が転がってしまった。

「……。」

気まずい空気が流れた。

すると先生は、その箸を取り

「恥じるのは、勝手だが…人の厚意は、
素直に受け取るべきだ。
どーせ上手くやれないくせに」

そう言ってきた。

(うっ……)

グサッと胸に刺さった。

確かに人の厚意は、素直に
受け取るべきなのだろう。
現に食べる事も出来ないのだし…。

「……すみません」

しゅんと落ち込んでしまった。

「謝るな。それよりさっさと食え。
食べないと無理やりでも口に押し込むぞ」

そう言いながら口のそばにブリを持ってくる先生。

やや強引にブリを口の中に押し込まれてしまった。

もぐ……。

「ん、美味しい……」

口を手で抑えながら味わう。
やっぱり美味しく出来たと思う。

「そうか、ならもっと食え。ほら、ご飯も」

またもや口に押し込まれた。

先生…慌てないで下さい。

恥ずかしかったが、先生の優しさが嬉しかった。

結局、全部食べさせてもらった。
お腹いっぱいで苦しい。