えっ!?

まさかの質問に驚いてしまった。

向いている人と言えば…。

「やっぱり河合先輩みたいな人でしょうか?
とにかく編集者として優秀で
優しくて頼りになります」

私は、先輩に色々と教わった。

「…確かに河合さんは、編集者としても優秀だ。
俺がデビューした頃から世話になっているしな。
だが、あの人の向いているのは、そんな事じゃねぇ」

「……えっ?」

「優秀な編集者は、他の出版社にもたくさんいる。
だが、俺が書いた作品を信頼して
任せたいと思えるのは、あの人だけだ」

先生は、そう言ってきた。

どうして?

先生は、そんなに
河合先輩を信頼しているのだろう。

「いくら編集者として優秀でも
そこに信頼関係が無いと意味がない。
俺の作品を要求するくせに
締め切りや内容にケチつける奴は、居たが
そいつら社内では優秀だと言われていた。
だが俺は、そんな奴に作品を預けたいと
思わない。何故だか分かるか?
その場限りの関係の奴に大切な作品を
預けられないからだ」

「それに比べて河合さんは、編集者の仕事より
常に家庭の手助けを優先にしてくれた。
赤ん坊だったコイツの世話を大分
助けてもらったしな。
だから仕事もやりやすかったし、信頼も出来た」

睦月君の頭を撫でながら話す先生。

河合先輩と先生には、そんな信頼関係があったんだ。
そういえば、先輩も似ている事を言っていたわ。

「ぐだらん事で悩む前に自分の出来る範囲で
頑張ればいい。
仕事ではなく相手のために動ける奴は、
自然と距離も縮まるんじゃねぇーの?」

ぶっきらぼうながらもアドバイスをしてくれた。

「は、はい。」

その言葉には、厳しさの中に
優しさがあるような気がした。