「そうだったのですか…?」

私は、驚きを隠せなかった。
先生も驚いた表情をしていた。

奥さんのお母様は、睦月君の頭を撫でながら

「あの人は、すでにあなたを許しているわ。
ただ一度こんな事を呟いていた事があったわ。」

『何で、アイツは…ずっと1人で居る?
沙織や我々の罪悪感や罪滅ぼしのつもりか?
くだらん。睦月のためにも
さっさと再婚でもすればいいものを』

「そう言っていたわ。
私はね…あれは、あなたへの配慮だと思うの。
口が悪いし、あの性格だからそうには、
思えないかも知れないけど
きっと沙織や私達のことは気にしないで
自分の幸せを掴まえろと
言いたいのではないかしら?」

お母様は、先生そう言った。

それって先生の事を許すだけだけなくて
解放してあげようとしているってことだろうか?

ずっと奥さんを死なせてしまったと
罪悪感を抱いている先生を救ってあげるための。

お父様の優しさ……。

言葉を無くした先生は、凄く驚いた表情をした後
切ない表情した。

あの夜に見た時と同じ今にも泣きそうだ。

「……俺は、沙織を愛しています。
これからも……彼女以外を愛せる
自信は、ありません」

ズキッとその言葉は、私の背中に
重く乗しかかる。

奥様以外を愛せない先生は、
一途で素敵な事のはずなのに

私には、泣きたくなるぐらい辛い言葉。

すると睦月君は、
不思議そうに首を傾げた。

「自信…ないの?パパ。
案外意気地無しだね?
拓馬が聞いたらそう言われちゃいそうだね」