病院に着くと慌てて病室に向かった。

しかし、間に合わなかった。
お父様は…亡くなった後だった。

「藤崎君……」

奥さんのお母様だろうか?

泣きながら先生の名を呼んだ。

「……すみません。遅くなって…」

先生は、悲しそうな表情で頭を下げた。

先生…。

私は、後ろに隠れるように立ち尽くした。

結局、和解が出来ないままお父様は、
亡くなってしまったようだ。

医師と看護師が頭を下げると病室から出て行く。
お母様は、私達の方を向くと

「いいのよ。急だったんだもの
それに…あら?そちらの方は?」

あっ…。

私は、慌てて挨拶した。

「は、はじめまして
蓮…藤崎先生の担当編集者・小野木涼花です。
あの…この度は、御愁傷様です」

深々と頭を下げた。

「……そう。担当編集者さんなのね」

ハンカチで涙を拭きながら言ってくれた。

しばらくして
廊下にある自販機に行き少し話をした。

お母様は、近くのソファーに座る。
睦月君もその隣に

私と先生は、立っていた。

するとお母様が

「主人が色々と迷惑をかけてごめんなさいね。
沙織にも…悪い事をしてしまったわ」

申し訳なさそうに謝罪する。

「いいえ。勝手な事をしたのは、俺達です。
お義父さんが俺を許してくれないのも無理はない。
俺のせいで沙織を早く死なせてしまったから」

先生…。

私は、その言葉を聞いた時、胸が苦しくなった。

違う。
先生は…奥さんの事を本当に愛していたのに