先生は、こちらに来ると慌てたように
「沙織のお義父さんの病状が急変した。
悪いが、病院に行って来るから睦月を頼む」
そう言ってきた。
えっ!?
奥さんのお父様が…?
それは、一大事だ。
早く行ってもらわないと…。
するとギュッと私の手を握り返す睦月君。
見ると私をジッと見つめていた。
睦月君……もしかして一緒に行きたいの?
「あの…私達も一緒に行ったらダメですか!?」
思わず口に出てしまった。
「はぁっ?」
「最期になるかも知れないなら
孫の睦月君を連れて行くべきです。
それに…私も会ってみたい」
睦月君は、孫なんだから分かる。
私は、何も関係ない他人だけど
ジッとなんかしていられない。
驚いたように黙り混む先生。
やっぱり無茶苦茶だったかしら?
すると先生は、
「ついて行きたいのならさっさと来い。
時間がない」と言ってくれた。
「は、はい。」
そして私達は、タクシーで
奥さんのお父様が入院している病院に向かった。