……分かっている。

分かっているけど
先生の愛しているのは、変わらず
奥さんだって事ぐらい。

どんなに想っても私は、奥さんに勝てない。

あんな風に想ってくれないって事ぐらい
分かっているのに

「………。」

涙が溢れてくる。

「おい。何で泣いてんだよ…お前?」

先生が、私の涙に気づいた。

でも、涙に気づいても
私の気持ちは、気づいてもくれない。

「……すみません。
ちょっと…頭を冷やしてきます」

そう言うと慌てて駆け出して部屋から出て行った。

「お、おい。小野木!?」

慌てて私の名を呼ぶ先生。
しかし、その声は…私には、聞こえなかった。

静まり返る部屋。
部屋に居るのは、先生と睦月君の2人きりだけ。

「…何なんだ?アイツは?
急に泣き出したり、岩神と会ったり…」

イラつく先生。

すると抱っこしてもらっていた睦月君は、
大きなため息を吐いた。

「…こら、何でお前がため息を吐くんだよ?」

眉を寄せながら言うと睦月君は、先生に

「……パパ。お姉ちゃんは、ママに
ヤキモチを妬いているんだよ」

そうため息混じりに言い出した。