その瞬間だった。

先生に抱っこされているはずの睦月君が
ガツッとそのマイクを掴まえた。

あっ!?

「……おじちゃん。
しつこい人は、嫌われちゃうよ?」

睦月君は、その報道陣の男性に言った。
私も報道陣の人達も驚いた。

すると睦月君は、徐に被っていた帽子を取り
顔を見せた。

周りの報道陣は、先生に
そっくりな睦月君を見て騒ぎ出した。

『可愛いですねぇー蓮見先生の息子さん。
おいくつですか?』

『おぉ蓮見先生に似ている。
これは、スクープだ!!』

あっという間に興味が私から睦月君に移っていた。

た、助かった……!!

あのままだと私に何をインタビューされるか
分かったものではなかった。

睦月君は、もしかして
私を助けるためにも自ら帽子を脱いだの?

「ったく話は、これで終わりだ。
行くぞ!」

先生は、睦月を抱っこし直すとそのまま歩き出した。

「あ…はい。」

私は、慌てて先生の後ろを追いかけた。

何とか報道陣から逃れる事が出来たが
その後に出版社に行くと編集長に叱られてしまう。

「行くなと言ったはずなのに
なんで報道陣に囲まれる事になっているんだ!?」

「も、申し訳ありませんでした」