「ゆっくり座れるし、トイレが混むこともない。 いいことだらけだよ?」

「ん……確かに、いいことだらけかも……」

「よし、じゃあ決まりっ」



柚希くんはニコッと笑ったかと思うと、

すぐに私の頭に手を置いた。


そして、

ポンポン と軽く叩いたあと、優しく優しく撫でてきた。



「ここから花火を見ればイヤなことは全部忘れられるよ。 期待しとけ?」



イヤなこと。

それはきっと、剛くんとのことを言ってるんだと思う。

ていうか、それ以外には無いもんね……。



「イヤなこと全部……か……」

「うん、花火見れば全部忘れるよ」

「……ありがとう、柚希くん」


「どういたしましてっ。 って、俺が花火を上げるわけじゃないけどなっ」



けらけらと笑いながらも、柚希くんはずっと私の頭を撫でてる。


前に触られた時は恥ずかしくて避けちゃったけど、

今はそうやってくれることが嬉しい。


柚希くんと二人で居られることが、

笑い合っていられることが堪らなく嬉しかった。