うーん……柚希くんって、実はかなり馬鹿なのかも。
変な人だなぁとは思ってたけど、相当 変で馬鹿な人なのかも。
「おいー、なんだよその呆れた顔ー」
「ん? えーっとね、柚希くんって面白い人だなーって思って」
「いや、どう見ても俺のこと馬鹿にしてるだろ」
「あ、うん。 ごめん馬鹿にしてました」
「ハッキリ言い切ったな、この野郎」
コツン と頭が叩かれる。
全然 痛くなかったけどね。
でも、今度は何故か柚希くんが呆れ顔で私を見てる。
「俺が馬鹿なのは別に否定しないけど、柳井だって相当の馬鹿だからな」
「え、どうして?」
「1ヶ月やそこらしか付き合ってなかった彼氏と別れて、子供みたいにワンワン泣いてただろ」
「あ……うん……」
彼氏と別れてワンワン泣いていた……か……。
確かにそう。
剛くんと別れたばかりだった私は、馬鹿みたいに泣いていた。
その時のことを思い出して、ズキズキと胸が痛み出す。
……忘れかけていたのに、記憶が甦ってきちゃった。
剛くんと別れてからずいぶん経ったし、あの時のショックも段々と薄れてきた。
でも ふとした瞬間に思い出して、また泣いちゃうことがある。
柚希くんと一緒に居る今は完全に忘れていたけれど、
まさか柚希くんの言葉で思い出してしまうなんて……。
「……ほんと、私って馬鹿だね」
そう言いながらも、胸はどんどん痛くなってくる。
剛くんの冷たい視線を思い出して、凄く苦しくなってきた。
あ、ヤバい泣いちゃうかも……。