「柚希くん、飲み物はまた買えば大丈夫。 ほら、いっぱいお店があるし」
あちらこちらに出店が出ている。
ちょっと割高にはなると思うけど、
どのお店でも飲み物が買えるし、食べ物もいっぱい置いてある。
駅で買ったペットボトルは残念だったけど、
せっかく花火大会の会場に来たんだから楽しまなくちゃっ。
「……ごめんな、柳井」
「ううん、大丈夫っ。 飲み物なんてどこでも売ってるもんっ」
「そうじゃなくて」
「え?」
私がギュッと握りしめていた手に、僅かに力が込められた。
柚希くんは真っ直ぐに私を見ていて、
私もその顔を真っ直ぐに見つめる。
凄く真剣な瞳に、そのまま吸い込まれてしまいそう……。
「柚希くん? どうか、した……?」
「……ペットボトルのことよりもさ、離れちゃってごめんな」
「あっ……ううん、会えたから大丈夫だよ」
「でも、泣きそうな顔してただろ?」
「それは……うん、少し不安だったから……」
「……」
「……」
不安だった。
そう言った私に柚希くんは何か言おうと口を開いたけど、
そのまま何も言わずに口を閉じてしまった。
どうしよう、無言になっちゃった。
何か声をかけた方がいいと思うけど、なんて言えばいいんだろう……?