「柳井、もっとこっち来て」



ふと、柚希くんが私の手を握りしめた。

とてもあったかくて、柚希くんのぬくもりが直に伝わってくる。



「もうすぐ駅に着くから、離れないようにな」

「うん、ありがとうっ」

「よし、頑張って降りるぞっ」



車内にアナウンスが響き、乗客はみんな降りる準備をし始めた。

まだドアは開いていないのに、どんどん後ろから押されていく。


とうとう私はドアにピッタリと貼り付くような格好になってしまったけれど、

その隣にはちゃんと柚希くんが居る。


私の手をしっかりと握りしめて、絶対に離さずにそこに居る。


……本当に心強い。

柚希くんが隣に居てくれると、本当に本当に安心出来る。



「手、離さないでな」

「うんっ」



電車が徐行し、再びアナウンス。

そしてドアが開くと同時に、乗客が一気に降り始めた。



「……っ……」



ヤバいっ。

後ろからメチャクチャ押されてて、柚希くんとの距離がっ……。



「柚希くんっ」



必死に声を出して柚希くんの方を見るけれど、

私と柚希くんの手は無情にも離れてしまった。



「出口向かって!!」



と、微かに柚希くんの声が聞こえた気がした。

だから私はその声を信じ、一人で出口へと向かう。


……大丈夫、外に出ればすぐに柚希くんと会えるっ。